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熊谷組/水中作業のICT 技術 小型水中バックホウの開発
――水中ガイダンスシステムの導入

〔プレスリリース〕2021年5月20日

 株式会社熊谷組(代表取締役社長 櫻野 泰則)は、極東建設株式会社(代表取締役社長 松原 成忠:沖縄県那覇市)と共同で、小型水中バックホウを開発し、内閣府沖縄総合事務局と国立研究開発法人 港湾空港技術研究所が研究開発を行っている「水中遠隔操作支援システム」の成果を応用した、水中作業用建設機械の傾き等の機械情報や周辺情報を合成して提供する「水中バックホウガイダンスシステム」を搭載し、実施工に導入しました。

 これにより目標の目視が困難な水中での建設機械の操作が誘導潜水士無しに施工できることが確認でき施工の生産性は約3倍になることが確認され、安全性と作業効率の向上を図ることができました。

  1. 背景

 今回の技術開発の背景となったのは、異常気象による豪雨で玉石や流木を含む数百㎥ の土砂が堆積したダム式発電所の放水口において、渇水期に短期間で効率よく堆積物を撤去する必要が生じた事でした。事前に水中測量した結果、撤去が必要な堆積物量は約600㎥と判明しました。放水口はトンネル状の暗渠となっており、グラブバケット浚渫等の作業船舶の利用ができないため、試験的に潜水士による人力施工を行いましたが、目視確認が困難な濁りと最大水深-14m、水温10℃以下の状況下では潜水士の肉体的負担も大きく、期待できる撤去量には至りませんでした。

 そのため効率の高い機械化施工が必要と判断し、小型水中バックホウを新規開発いたしました。さらにi-Construction のマシンガイダンス技術を水中現場に応用し、ソナー(SONAR:Sound navigation and ranging)で計測した作業状況を運転席に表示することで、目視確認が効かない濁水環境下においても安全で効率的な作業を実現しました。

陸上テストにおいて、水中を模擬して潜水士誘導による運転とマシンガイダンス情報と同等の有視界による運転の効率比較を行ったところ、約3倍の操作効率向上が認められました。水中の実施工でも同等の効率であることを確認しました。

  1. 施工方法と装置の選定

 堆積物量が数百㎥であるため、潜水士による人力掘削やエアリフト浚渫、水中ネットコンベア等による連続揚収が効果的ですが、透明度が極端に低い水中での回転機械は、潜水ホースの絡まりなど重大な事故を招く可能性があります。そこで水中バックホウにより堆積物を暗渠外へ搬出後、穴あきベッセルによる陸上揚収という施工手順を適用することとしました。また上空制限のある現場条件のため、使用できるクレーンは25tラフテレーンクレーン(作業半径15mで吊り荷重3t以下)となり、定格荷重3t以下の機械装置の開発が必要となりました。

 3tクラスの小型バックホウによる施工を想定しましたが、勾配のある人頭大の玉石等の堆積物上での作業となるため、走行の可否や転石掘り起こしの可否、掘削能力について事前に潜水士による試験作業を行いました。その結果、水中バックホウによる施工で堆積物除去および移動先の平面均しが可能と判断しました。

 使用する小型水中バックホウの設計開発には港湾工事で利用されている既存水中バックホウを参考とし、以下の仕様で新規製作しました。

<小型水中バックホウの主な仕様>

ベース機体 :ミニバックホウ(2.99t)バケット容量0.09㎥クラス

動力源 :水中モーター(20kW)に変更(陸上から給電)

給電ケーブル:フロートケーブルを採用(戸当り部との干渉を低減)

油脂類 :生分解性の作動油等を採用(万が一の漏油対策)

転倒対策 :浮上用エアリフトバックを装備。ロールバー状フレームの装備。

(暗渠内から排出可能)

小型水中バックホウ

小型水中バックホウ

〔出典〕㈱熊谷組

  1. 水中マシンガイダンスの開発

 水中透明度は約30cm 程度と極めて低く、運転席から周囲の状況を目視確認することは不可能な環境であり、また作業現場となる放水路は暗渠狭隘部のうえ傾斜していたため、安全性確保のためにはコンクリート壁面やアーム角度などの機体姿勢をグラフィカルに表示する「水中マシンガイダンス(注)」技術が有効であると判断しました。

 この水中マシンガイダンスの特徴として、外界状況を計測するためのソナーを追加しており、機体周辺の堆積物の形状や、機体と水路壁面までの距離を表示することが可能となっています。

 また水路壁面など構造物の形状を3D表示することで、狭隘部での位置関係を直感的に認識することが可能となり、放水路壁面や天井との接触事故を防ぐ事ができます(CIMデータの活用)。

(注)<水中マシンガイダンス>

内閣府沖縄総合事務局と国立研究開発法人 港湾空港技術研究所が研究開発をおこなっている「水中遠隔操作支援システム」の成果を応用したものです。

本事業における小型水中バックホウへの適応は、港湾空港技術研究所と共同研究を実施している極東建設株式会社が担当しました。

水中マシンガイダンスシステム

水中マシンガイダンスシステム

〔出典〕㈱熊谷組

  1. 効率化比較

 陸上テストにおいて、水中を模擬して潜水士誘導による運転とマシンガイダンス情報と同等の有視界による運転の効率比較を行ったところ、約3倍の操作効率向上が認められました。水中の実施工でも同等の効率であることを確認しました。

 また誘導の場合は、潜水士の音声指示のみで地面の状況を認識しますが、水中マシンガイダンスではソナー計測による地形を表示しているため、水中透明度は約30cm程度といった全く視認ができない状況下においても、マシンガイダンスによって周辺認識率は格段に高くなり、安全性の向上や作業の効率化に有効な手段となりました。

  1. 導入結果

実施工への導入については、電源開発株式会社の水力発電所放水口土砂排除工事に適用しました。作業支援船として面積約40㎡の鋼製ポンツーンを使用し、マシンガイダンス支援室・動力発電機・潜水機器のほか、機体収容スペースを配置しました。

3トン水中バックホウは、川縁に別途配置した25t ラフテレーンクレーンにより投入揚収をおこないました。

投入後、暗渠壁面の位置や暗渠底面の状況をソナーで確認し、潜水士の搭乗操作により放水口暗渠内に進入して堆積土砂を撤去します。土砂はバケットに入れたままバックホウ後方の開水路側に配置した穴あきベッセル(1㎥積)まで運搬します。3tバックホウのバケット容量は0.08㎥であるため、24~25回の移動・掘削・運搬を繰り返します。

穴あきベッセルの位置についても、ソナー計測で認識可能であったため、初回の運搬で位置を認識し、2回目以降はガイダンスシステムにより移動・掘削・運搬の作業が効率的に行えました。

※工事では安全確認も兼ねて、常時、誘導潜水士を配置しました。

作業中のマシンガイダンスは、支援室内のPC により操作を行います。

ベッセルに満載となった堆積物は、前述の25t ラフテレーンクレーンにより揚収します。

本施工現場への導入は、2020 年11 月25 日から2021 年2 月19 日までの期間で約530㎥の堆積物を撤去しました。

現場環境から使用できる機体が0.08㎥と小さく、堆積物の運搬作業を繰り返す必要があったため、作業効率的には改善すべき点もありますが、水中作業での肉体的負担軽減と安全性向上については大きな効果が得られています。

 

水中作業については、いままでは潜水士の肉体労働に依存してきました。これは機械的な問題以外に、濁水で周辺が見えない(=作業状況が把握できない)という要因が大きく関係しています。この課題に対し、機体姿勢のコンピュータグラフィックス表示や、ソナー映像による周辺地形を運転席に設置した水中モニターに表示することで解決しました。

さらに周辺構造物の設計データを三次元データ化し、鳥瞰表示することで、水中バックホウと壁面の位置関係を直感的に認識でき、暗渠狭隘域での安全性が向上しました。

このように水中作業の機械化において、i-Construction の活用は非常に有効であり、さらにBIM/CIM データ活用の1つとして、水中機械化施工における安全性向上への適応を提案できました。

  1. 今後の展開

 ダムの維持管理・老朽化対策、異常気象による河川等の応急対策工事など、狭隘な水中作業は今後増加する傾向にあります。目視が困難な水中での建設機械の操作の安全性と作業効率の向上を図ることが可能となる「水中バックホウガイダンスシステム」の活躍する機会は、今後大幅に増加していく事が想定されます。

 今後は熊谷組の遠隔操作技術や、VR技術(シンクロアスリート)等を組み込み、本システムの更なる機能向上を図り、水中作業の作業量低減による安全性向上およびVR技術による姿勢認識機能による効率化を図っていく予定です。

お問い合わせ先

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株式会社熊谷組 コーポレートコミュニケーション室

広報グループ 電話03-3235-8155

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株式会社 熊谷組 土木事業本部

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