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全建/令和6年度 税制改正に関する要望の結果について発表

一般社団法人全国建設業協会(会長:奥村太加典)では、各都道府県建設業協会の税制改正に関する意見を取りまとめ、「令和6年度 税制改正に 関する要望」として自由民主党や国土交通省へ要望書を提出する等の要望活動を行った。
2024年12月14日、自民、公明両党において「令和6年度税制改正大綱」の決定に伴い、同会の要望結果について以下のとおり報告がなされた。

1.中小企業向け所得拡大促進税制の延長等

労働力人口が減少していく中、建設業においては、国土強靱化を推進するための防災・減災対策やインフラの長寿命化等に対応するため、担い手確保・育成が喫緊の課題であり、官民挙げてこの課題に取り組んでいるところである。
地域の中小建設企業においても、地域の安全・安心の守り手としての役割を果たしていくために、この課題に取り組んでいるところではあるが、依然として余裕のある経営状況ではない。
このため、地域の中小建設企業が積極的に、担い手の確保・育成に取り組めるよう、雇用者給与等が増額した場合の税額控除を延長していただきたい。
また、さらなる利用の促進を図るため、税額控除率について、給与増加率 1.5%以上の場合の控除率(15%)及び同 2.5%以上の場合の控除率30%)、教育訓練費を増加した場合の控除率(+10%)を引き上げていただくとともに、当該教育訓練費増加率要件10%以上)を引下げていただきたい。

◆結果
【延長】○
【適用条件】○ 教育訓練費増加率要件の引下げ(10%→5%)
⇒適用期限の【3年間延長】が認められ 、令和9年(2027年)3月31日までとなったほか、控除限度超過額は5年間の繰越しが可能となった。また、教育訓練費増加率要件の緩和が認められ、 5%以上(現行10%以上)に引下げられた。

2.少額減価償却資産の損金算入限度額の引上げ等

昨今、建設業界では人手不足を補うために生産性の向上を目的としてIT機器等の導入及び利活用が積極的に図られている。
IT機器等は、その取得価額の全額が損金算入できる限度額の10万円を超えることも多いため、実態に即して取得価額の全額が損金算入できる減価償却資産の限度額を10万円未満から30万円未満まで引き上げていただきたい。
また、この引上げが難しい場合においても、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置(取得価額10万円→30万円)の延長及び年間上限額(300万円)の引上げを要望する。

◆結果
【延長】○
【限度額引上げ】×
⇒適用期限の【2年間延長】が認められ、令和8年(2026年)3月31日までとなった一方、本則の取得価額の限度額および特例措置の年間上限額の引上げは認められなかった。

3.欠損金の繰戻し還付制度における中小企業者等に係る特例措置の延長

中小企業者等は経営基盤が脆弱であるため、当該特例措置は業績の低迷時における企業経営の下支えとなっている。また、中小企業の経営力は大企業と比較し質量ともに不足し、好不況に左右されるため、年度における欠損を解消することにより経営を軌道に乗せ、事業の継続を図るためには一定程度のセーフティネットが不可欠である。
そのため、欠損金が生じた前年度に納付した法人税から欠損金の分だけ還付を受けることができる欠損金の繰戻し還付制度における中小企業者等に係る特例措置を延長していただきたい。

◆結果
【延長】○
⇒適用期限の【2年間延長】が認められ、令和8年(2026年)3月31日までとなった。

4.新築住宅に係る固定資産税の減額措置及び住宅建設・売買に伴う登録免許税の軽減措置の延長

住宅取得の活性化は、都市部・地方部を問わず内需の拡大に繋がるものであり、また、住宅取得者の初期負担の軽減を通じて良質な住宅の建設を促進する必要がある。このため、新築住宅に係る固定資産税の減額措置(一般住宅 3 年間 1/2 、マンション 5 年間 1/2 )を延長していただきたい。 また、 住宅建設・売買に伴う登録免許税に関する軽減措置(保存登記 本則0.4%→特例0.15%、移転登記本則2.0%→0.3%等)も併せて延長していただきたい。

◆結果 【延長】○
⇒各税制の適用期限について、以下の通り延長が認められた。
・固定資産税の減額措置:【2年間延長】令和8年(2026年)3月31日まで
・登録免許税の軽減措置:【3年間延長】令和9年(2027年)3月31日まで

5.地方拠点強化税制の延長

地域建設業は、社会資本整備の担い手であるとともに、自然災害の最前線で活動する安全・安心の守り手である。地方 の中小建設企業は依然として余裕のある経営状況ではないことから、 地方拠点強化税制(本社機能の地方移転や地方での拡充を行う場合にオフィス減税(特別償却又は税額控除)や雇用促進税制(税額控除)の適用ができる税制)を延長していただきたい。

◆結果
【延長】○
⇒適用期限の【2年間延長】が認められ、令和8年(2026年)3月31日までとなった。

6.交際費等に係る特例措置の延長及び損金算入額の拡充

中小企業は大企業に比べ販売促進手段が限られており、交際費等は中小企業の事業活動に不可欠な経費となっている。なお、建設現場において近隣対策に要する費用は、地域住民や周辺の生活環境への配慮により発生する工事原価であるものの、一定の基準に基づかない支払いなどは、交際費等として処理する場合が少なくない。
そのため、交際費等に係る法人税の特例措置(資本金1億円以下の企業にあっては800万円までの全額損金算入又は接待飲食費の50%の損金算入のいずれかを選択適用、資本金100億円以下の企業にあっては接待飲食費の50%の損金算入)を延長していただくともに、近年の物価高騰による飲食費の上昇を受け、交際費等のうち、接待飲食費を損金に算入できる上限額一人5,000円を引上げていただきたい。

◆結果
【延長】○
【上限額引上げ】○ 5,000円→10,000円
⇒適用期限の【3年間延長】が認められ 、令和9年(2027年)3月31日までとなったほか、 接待飲食費を損金に算入できる上限額が一人当たり10,000円以下に引上げられた。(※令和6年4月1日以後に支出する飲食費について適用)

7.非上場企業等の事業継承税制による特例承継計画の提出期限の延長

中小企業の円滑な事業承継を支援するための法人版事業承継税制については、平成30年度税制改正により、令和9年12月末までの特例措置として雇用確保要件等が大幅に拡充された。 特例措置を利用するためには、特例承継計画を令和6年3月末まで提出する必要があるが、建設業が抱える高齢化や後継者不足等の問題が常態化している中、中小建設企業の安定的な成長と地域雇用を維持していくためにも、特例承継計画の提出期限を1年延長していただきたい。

◆結果
【延 長】○
⇒提出期限の【2年間延長】が認められ、令和8年(2026年)3月31日までとなった。

8.工事請負契約書に係る印紙税の撤廃等請負契約書に係る印紙税の撤廃等

印紙税は、経済取引に伴い作成される文書の背後に経済的利益があるものと推定し、担税力を見出して課税するものである。しかし、建設業の場合は、担税力の有無に関係なく通常の仕事を行うために先ず書面による工事請負契約書を作成しなければならず、建設業の特徴の一つとして、重層請負構造を形成していることから、各階層間で締結する工事請負契約書の印紙税は多重課税であり、過重負担となっている。
また、昨今、電子商取引が進展する中、電子契約書は非課税とされており、「書面か否か」の違いだけで課税の有無が判断されていることは課税根拠を欠くもので不公平であり、 欧米主要国においては工事請負契約に関する文書が課税されていないことから是正すべきである。このため、工事請負契約書に係る印紙税の撤廃をしていただきたい。また、撤廃が難しい場合においては、軽減措置の延長をしていただきたい。

◆結果
【撤 廃】×
【延 長】○
⇒印紙税の撤廃は認められなかったものの、軽減措置適用期限の【3年間延長】が認められ、令和9年(2027年)3月31日までとなった。

9.軽油引取税の課税免除措置の延長

近年多発する災害からの復旧・復興や国土強靱化に向けたインフラ整備等、円滑に工事を施工し、将来にわたる品質や安全を確保するために、とび・土工工事業者及び作業船等を保有する港湾整備工事業者が果たす役割は極めて大きい。経営基盤が脆弱な中小建設企業が引き続き事業を営んでいくために、建設機械及び港湾整備等で使用する各種作業船の動力源に係る軽油引取税の課税免除措置を延長していただきたい。

◆結果
【延長】○
⇒適用期限の【3年間延長】が認められ、令和9年(2027年)3月31日までとなった。

なお、「Ⅱ.運用・手続き等の改善要望」などの建設業における税制上の課題については、長期的な要望が含まれていることから、今後も引き続き要望することを検討いたします。