|特集| 既存建機後付装置
建機と作業員の接触事故を防ぐ、アクティオの後付け安全システム「フォーエスバックホー」
株式会社アクティオ(本社:東京都中央区日本橋、代表取締役社長兼COO:小沼直人氏、以下、アクティオ)は、「建設現場における事故を減らし、人命を守りたい」という思いから、建機に後付け可能な安全対策システムを開発してきた。
最新版となる「フォーエスバックホー」は、「SAFETY」「STOP」「SIGNAL」「SENSOR」をキーワードに、人と重機を2段階で検知する安全対策用の新システムだ。バックホーと接触する可能性が低い少し離れた外側エリアでは、作業員が身につけたタグによる警報と振動で知らせ、同時にオペレーターにも警報ランプとアラームで通知。さらに、バックホーと接触する可能性が高い至近エリアでは、作業員がエリア内に立ち入ると重機は自動で停止する。
新型機の安全対策にくらべ、市中に出回っている従来機の安全対策は優先順位が低くなりがちだ。しかし「いまレンタルしている建機の安全性向上こそ使命」と話す、アクティオ
道路機械事業部
事業部長の今関政美氏(以下、今関氏)と同部 業務部長の稲葉誠一氏(以下、稲葉氏)に、安全対策システムの開発経緯や事業部の方針などについて話を伺った。
なお、本記事の最後に「フォーエスバックホー」の紹介動画を掲載しているので、ぜひご覧いただきたい。
ポイントは磁気センサーと「安全の見える化」
「フォーエスバックホー」の開発経緯を教えてください。
今関氏:建設業における労働災害の発生件数が多いのはご存知だと思います。死亡者数は全産業のなかでワースト1ですし、死傷者数も2番目の多さです。重機の種類別に見るとバックホーなどの土木用建機と作業員の接触事故が最多で、現場の安全確保は急務の課題でした。そこで以前から安全対策製品の開発を推進しており、オペレーターの死角となる後方には動かない「バックしないバックホー」や緊急停止装置付きの「スリーエスバックホー」を実用化しました。このスリーエスバックホーはフォーエスバックホーのプロトタイプともいえるもので、開発したのは10年ほど前です。
フォーエスバックホーとの違いは?
稲葉氏:一番の違いはセンサーです。“スリーエス”では赤外線を使っていましたが、“フォーエス”では磁界を採用しています。これによって目視範囲はもちろん、物陰や障害物の向こう側まで全方位360°で検知できるようになりました。検知距離は3〜12メートルで、6段階の調整が可能です。検知エリアは外側、内側と設定でき、タグを身につけた作業員が外側エリアに入るとタグの警報と振動で作業員本人に知らせ、オペレーターにも警報ランプとアラームで通知します。そして、作業員が内側エリアに侵入すると重機が停止する仕組みです。ただし、停止すると工事が進まない現場もあるため、停止させず警報のみに設定することもできます。現場環境に合わせた使い方ができるのも特長のひとつですね。
今関氏:キャピン上部の積層灯もポイントになっています。外側エリアで検知すると積層灯は青から黄色に、内側エリアで検知すると黄色から赤に変化しますが、これを周りから見られる状態が重要。つまり「安全の見える化」です。SAFETY、STOP、SENSORというスリーエスに、「SIGNAL=見える化」を加えたのがフォーエスバックホーというわけです。
過酷な経験が導いた改良の可能性
そもそもなぜ改良が必要だったのでしょうか?
今関氏:スリーエスバックホーを使っていくうちに、センサーを装着したヘルメットの重さや、別のセンサーに反応するなどの声が現場から寄せられるようになりました。そこで、赤外線から全方位をカバーする磁界式に変更し、タグも警報+振動の着衣用と警報のみのヘルメット用という2種類を提供することにしたのです。着衣用タグには、つけていることがひと目でわかる透明のアームバンドも用意しています。これも「見える化」の一環です。
稲葉氏:トンネル内でスリーエスバックホーを使った現場での経験も、改良を進めるきっかけになりました。それまでトンネルで使ったことがなく不安でしたが、案の定トラブルが発生し、私たちは現場に駆けつけました。するとトンネル内は粉じんであたり一面が真っ白。その粉じんが蓄積しセンサーを遮ってしまうのがトラブルの原因でした。この経験から粉じんなどが降りかかっても機能するセンサーを探し始め、ようやく磁界式にたどり着いたのです。
安全性の向上を優先しながら、新たな価値提案を継続
フォーエスバックホーで次の展開は考えられていますか?
稲葉氏:お客様からはバックホー以外への応用という声もいただきます。検知の面ではすぐにでも応用可能ですが、停止機能については相応の調整が必要ですね。急停止するのも、停まるまでが冗長になっても問題で、停止するまでの距離がポイントになるでしょうか。これをクリアできたら、ローラーなどへの応用も検討したいと考えています。
今関氏:国土交通省が推進するi-Constructionでは、ICTなどの活用によって生産性の2割向上を目指しています。しかし、ひとたび事故が起これば工事は止まってしまい、生産性どころではありません。それを考えれば、まずは安全性の確保を優先すべきですから、今後も安全対策システムの開発には注力していくでしょう。また、当社のコンセプトである「レンサルティング※」を実践するため、お客様の困りごとを吸い上げ、それを商品開発にフィードバックするなど、新たな価値の提案も続けていきます。
※「レンタル」に「コンサルティング」を合わせた造語で、アクティオが商標登録している
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取材で訪れたアクティオの東京DLセンター(東京都江東区新砂) -
道路機械事業部 事業部長の今関政美氏 -
道路機械事業部 業務部長の稲葉誠一氏 -
フォーエスバックホーの検知器について説明する稲葉氏 -
透明のアームバンドに収納された着衣用タグ(警報・振動)